あの「マスカット」とワインの知識
マスカットは、紀元前2000年前に遡る古代ギリシア・ローマ時代から人気を博してきた歴史あるブドウ品種です。
マスカットには、以下のようなブドウ品種があります。
・マスカット・オブ・アレキサンドリア(エジプト)
・ネオマスカット(岡山)
・甲斐路(山梨)
・マスカット甲府(山梨)
・マスカット・オットネル(ハンガリー)
・ミュスカ・ブラン・ア・プティ・グラン (Muscat Blanc à Petits Grains)
・モリオ・ムスカート(ドイツ)
・ミュスカ(フランス)
・モスカート(イタリア)
・イタリア(イタリア)
日本でマスカットと認識されるのが「マスカット・オブ・アレキサンドリア」
マスカット・オブ・アレキサンドリアはエジプトが原産で、「ぶどうの女王」の別名があります。
日本では岡山県が名産地で、岡山県の中でも倉敷市船穂町では、たくさんのぶどう生産農家が競って良質なマスカット・オブ・アレキサンドリアを造り上げています。
ヨーロッパ・ブドウとは珍しく、生食にも用いられます。
華やかな名前なので、日本のデパートやフルーツショップで四角い箱に収まり、大粒でゴージャスなオーラを放つ高級ブドウのイメージがあるかもしれません。
ところが、本場ヨーロッパのマスカット・オブ・アレキサンドリアは、房そのものがはるかに細長く、その細長い果梗(枝から細く伸び、先に果実をつけている部分)に、比較的小粒のブドウがびっしりとついた、どちらかというと高級感には欠ける見た目を成していて、日本の方は信じられないかもしれません。
日本のマスカット・オブ・アレキサンドリアは、花が咲いて実がなった直後に、房を刈り込み、粒の数を大幅に減らして形を整えています。
言ってみれば、トリミング・マスカット・オブ・アレキサンドリアなんです。
マスカット・オブ・アレキサンドリアからできる「モルシ・ディ・ルーチェ」
マスカット・オブ・アレキサンドリアのワインと言えば、シチリア島とアフリカ大陸の間に浮かぶ、地中海の小さな島パンテッレーリア酸の甘口酒精強化ワインがあります。
「酒精」は「しゅせい」で、言ってしまえば、「アルコール」の漢字版です。ですから、酒精強化ワインはアルコールが強めのワインという意味です。製造の過程でアルコールを加えて度数を高くします。
パンテッレーリアのワインは、マスカットならではのフレッシュな果実香をそのままに生かした、みずみずしい風味を特徴としています。房の色がオレンジ色が混じってくるほどにじっくりと待ってから収穫した完熟ブドウを使うため、蜜のように甘やかな香りが漂うワインになります。
世界が重宝する「ミュスカ」
ワインの世界では、マスカット・オブ・アレキサンドリアよりも重宝されるマスカットが「ミュスカ」です。
ミュスカは、フランス語で「白いマスカット」の意味を持ちます。
ミュスカを使った最も有名なワインは、イタリアのピエモンテの甘口スパークリングワイン「アスティ・スプマンテ」です。
日本のカタログなどでは、「マスカットそのもののみずみずしさ」と形容されていますが、生食用のマスカットの香りというよりも、蜜リンゴや柑橘系の花から獲ったハチミツを連想させる甘くみずみずしい香りで、それでいて、びっくりするほどに爽やかな口当たりが特徴です。甘口のスパークリングワインがあまり好きでなくても、アスティ・スプマンテは格別といった評価を下すくほどです。
ひたすらにフレッシュで、フルーティーで、爽やかなアスティ・スプマンテは、男性と一緒に食前やお昼のお茶の代わり、さらには、ピクニックや花見など、多様なシーンで、美味しく頂くことができます。
フランス屈指の「ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴーニ」
ミュスカを使ったフランスワインでは、「ミュスカ・ド・ボーム・ド・ヴーニ」が有名です。桃やオレンジ、プラム、ママレードなどを思わせるフルーティーな香りが、香水のように華やかに香り立つ、爽やかで上品なワインです。食前と食後にどちらに飲んでも、舌を楽しませ、気分を高めてくれます。
色合いは、淡い金色から綺麗なロゼ色まで様々で、ブドウ品種にマスカットを連想できないくらいロゼっぽいものもあります。
ローヌ地方のミュスカは、突然変異しやすく、いろんな色合いをしたブドウがごちゃごちゃに植えているように見えるほどです。そのため、ロゼワインにしか見えないワインが生まれてしまうのです。
最後に
日本のマスカットと世界のワイン業界におけるマスカットの認識の違いなども理解できたかと思います。食べてばかりで、ワインとして、マスカットが品種のワインを飲んだことがない方は、ぜひ、試してみて下さい。