嫁に食わすな?美味しい秋ナスの食べ方
ナスと言えば、和食はもちろん、中華料理、南仏・イタリアなど地中海沿岸料理、中東料理、インド料理、東南アジア料理など、世界中の国々でさまざまな調理法で食べられ、愛されている野菜です。
淡泊な味わいのため、調理法や使用する調味料・スパイスによってさまざまな味わいに変貌するのがナスの魅力。
MELLOW読者の皆様にとっても、フランス料理のラタトゥイユや、グラタンやパスタの具など、ワインやノンアルコールワインにピッタリのレシピでおなじみの野菜と思います。
「秋ナスは嫁に食わすな」ということわざがあるほど、ナスが美味しい時期と言われる秋。
今回は、なぜ秋ナスが美味しいのか、ナスの栄養価、ナスのおいしさをアップさせる調理法、美味しいナスの見分け方など、ナスについてさまざまな角度から調べてみました。
◇夏ナスと秋ナス、違いはどこにある?
ナスの原産地はインド東部やミャンマー周辺の熱帯地方といわれています。
暑い地域の野菜のため、日本では夏に栽培されて、旬は6月から9月頃。
収穫時期により、初夏から8月頃までに収穫されるものが夏ナス、8月中旬以降に収穫されるものが秋ナスとされ、特に、秋ナスはみずみずしく味が詰まっていてとても美味とされています。
夏野菜のはずのナス。しかし、秋の方が美味しいといわれるのはどのような理由によるのでしょうか?
ナスは育つ時に水分をたくさん必要とする野菜です。暑い日が続く真夏、強い日差しの下、水分が不足しがちな環境で実った夏ナスは、皮が厚く身のつまったナスになります。
また、暑い時期には、光合成によって生み出されるエネルギーの大半がナス自身の呼吸や、葉や根の成長のために使われてしまうため、うまみを実に蓄えることができず、そのため夏ナスは味わいが今ひとつといわれています。
それに対して、気温が下がり始める秋口に実をつける秋ナスは、夏ナスに比べて小ぶりなものの、水分が多くてみずみずしく、皮も薄くて柔らかく、また、アミノ酸などの成分が多く蓄えられるため、甘みやうま味もたっぷり。さらに、収穫シーズンも終わりに近いため種も少なめと、いいことづくしの美味しいナスになるのです。
ちなみに、有名な「秋ナスは嫁に食わすな」という言い伝えには、複数の解釈があるのをご存じですか?
1.イジワル姑説
「美味しい秋ナスを、嫌いな嫁に食べさせるのはもったいない」。
姑の嫁いびりという定番の解釈です。
2.やさしい姑説
漢方医学では、水分が多いナスは、食べると体を冷やすといわれています。これから妊娠・出産の適齢期を迎える若い女性にとっては体の冷えは大敵のため、秋ナスが美味しいからとたくさん食べてお嫁さんの体調が悪らないようにという、姑の優しい配慮という説もあります。
また、秋のナスには種が少ないことから、ナスを食べて子宝に恵まれなくなるのを防ぐという縁起担ぎという説もあります。
3.ネズミ説
第三の説が、ネズミ。「秋ナスはヨメに食わすな」のヨメは嫁でなく「夜目」であり、ネズミを意味しているというもの。
鎌倉後期に編纂された和歌集『夫木和歌抄』には、
「秋なすび わささの粕につきまぜて よめにはくれじ 棚におくとも」
という和歌が含まれています。
これは、「美味しい秋ナスの粕漬を棚に置いて、ネズミ(よめ=夜目)に食べられてしまわないように気を付けよ」という意味の歌で、これが「秋ナスはヨメに食わすな」の出典になっているという説です。
どれが正しい説かははっきりしませんが、秋ナスがいかに美味しいかということはよく分かりますね!
◇ナスには栄養がないって本当?栄養を無駄なく摂取するポイントは?
「ナスには栄養がない」と聞いたことはありませんか?
実はナスの93%は水分。そのため、緑黄色野菜のように栄養素が詰まった野菜ではありませんが、生活習慣病を気にする人に嬉しい次のような栄養素が含まれています。
・カリウム
人体に最も多く含まれるミネラルがカリウム。カリウムには細胞の浸透圧を調整する働きがあるほか、体内の余分な塩分(ナトリウム)を排出する働きがあるため、血圧を下げたり、塩分過多によるむくみを解消する効果があります。
生活習慣病が気になる年代の方や、外食などで塩分の多い食事を取ることが多い方は、意識的に摂取したい栄養素ですね。
・食物繊維
大腸内の善玉菌の餌になって、腸内環境の改善に役立つことで知られる食物繊維。ナスは100グラムあたり2.2グラムと、食卓でおなじみのキャベツや大根よりも多くの食物繊維を含んでいます。
食物繊維にはさらに水溶性、不溶性の2種類があり、腸内環境改善以外にも、それぞれ違う働きを持っています。
水に溶けやすい水溶性食物繊維は、小腸での栄養素の吸収を緩やかにして食後の血糖値の上昇を抑えたり、コレステロールや塩分を排出する作用があるため、糖尿病、高血圧、動脈硬化など、さまざまな生活習慣病の予防に効果があります。
不溶性食物繊維は、腸内で水分を吸収して便の量を増やして便通を改善します。また、有害物質を吸着して便と一緒に体外に排出するため、腸をきれいにしたり、大腸がんのリスク軽減するといわれています。
ナスはどちらの食物繊維もバランスよく含んでいてとても優秀です。
美容や健康を気にされるならぜひ食べていただきたい、おすすめの野菜です。
・葉酸
妊婦さんに必須のビタミンとして知られる葉酸。DNAやRNAなどの核酸の合成を促す葉酸は、細胞の生産や再生に関わるビタミンです。
そのため、葉酸が不足すると、赤血球の生産に問題が生じて貧血が引き起こされたり、また、妊娠初期の葉酸の不足は、胎児の神経系の形成に深刻な問題を引き起こす可能性があります。
妊娠中の女性は、葉酸の必要量が通常時の約1.8倍に増加します。
妊娠しているプレママの皆さんは積極的な摂取を心掛けたいのはもちろん、妊娠から数週間以内の、自分ではまだ自覚のない妊娠超初期(胎児の神経系が形成される重要な時期です)に葉酸が不足しないよう、これから妊娠を望んでいる女性も葉酸を積極的に摂取したいですね。
・ナスニン
ナスの紫色の元になっているのが、ポリフェノールの一種でアントシアニン系の色素のナスニン。
ブルーベリーに含まれるアントシアニンと同様、眼の網膜で光や色を感じて伝達する色素のロドプシンの分解・再合成を助けるため、視力アップや眼精疲労の回復に役立つと言われています。
ほかにも、コレステロール値を下げる作用があるため、高脂血症や動脈硬化の予防に期待できます。
・クロロゲン酸
ナスを切ったまま放置すると、切り口が黒くなってしまいますよね。これは、ナスにはクロロゲン酸というポリフェノールが含まれているため。
クロロゲン酸は強い抗酸化力を持ち、活性酸素の害を抑えます。そのため、シミ・しわを予防するアンチエイジング効果や、ガンや生活習慣病の予防効果が期待できるといわれています。
また、クロロゲン酸は、糖質を分解する酵素の働きを阻害して、糖質の吸収を緩やかにすることが知られており、サプリメントにも使用されているほど。糖尿病や肥満の予防にも期待できますね。
このようにナスは、少なめながらも体に嬉しいさまざまな栄養素を含んでいます
栄養素を無駄なく効果的に取り入れるためのポイントは、なるべく皮ごと調理をすること。なぜならば、ナスニンやクロロゲン酸を始めとするナスの栄養素は、皮周辺の部分に多く含まれているからです。
また、ナスに含まれる栄養素には水溶性のものが多いため、変色を防ぐためにあまり長時間水にさらしてしまうと栄養素が溶け出してしまいます。
栄養素をしっかり取り入れるためにも、皮ごと食べる&水にはさらしすぎないの2点に気を付けて調理してくださいね。
◇秋ナスのおいしさを最高に引き出す調理法は?
水分が多く、みずみずしさが特徴の秋ナス。そんな秋ナスのおいしさを最高に引き出すには、丸ごと皮つきのまま加熱調理するのがおすすめです。
小さく切らず、皮つきのまま加熱することで、ナスの内部に水分やうまみがしっかりと保たれたまま火が通り、トロトロとろけるようにジューシーに甘く調理できます。
★丸ごと焼きナス
ここでは魚焼きグリルを使い焼く方法を紹介しますが、フライパンやオーブントースターで焼いてもokです。
(下ごしらえ)
・ナスは軽く洗って、キッチンペーパーで水分を拭き取る。
ヘタは切り落とさず、ガク(ヘタのぴらぴらしている部分)の部分に包丁でくるりと丸く切れ込みを入れ、ガクのみをへたから外す。
・つまようじや竹串で、皮を何カ所かつついて穴をあける。これは加熱中にナスの中の水分が水蒸気になって出るための穴。開け忘れると爆発してしまうので要注意です。
・魚焼きグリルにナスを乗せて、皮がしっかり焦げるまで強火で5分、裏返してさらに5分焼く。(両面焼きなら裏返し不要で5分)焼き足りない箇所があったら、その部分がグリルの火にあたるように調整してまんべんなく焼いてください。フライパンで焼く場合は、3分ずづ、4面を焼くとよいでしょう。オーブントースターの場合は、アルミホイルに乗せて10分、裏返してさらに10分焼きます。いずれも様子を見ながら加減して焼き上げましょう。
箸で押すと力を入れなくてもへこんで、ナスの中の水分がにじみ出してくれば焼き上がりです。
熱いうちに、手に水をつけながら皮をむきます。身は食べやすいよう、箸で繊維に沿って身を割いたり、適当な大きさに切りましょう。
・熱々のうちに、好みの調味料で召し上がれ。おすすめの味付けを紹介します。a. 醤油&鰹節&おろししょうが
定番の味付け。おろししょうがは、チューブでなく生しょうがをおろしたものを使うとさらにおいしさがアップします。
b. バター&ポン酢
ナスは油と好相性。皮をむいたナスに小さく切ったバターを挟み、ポン酢をかけます。
c. オリーブオイル&岩塩&バルサミコ
オリーブオイルを回しかけ岩塩を振りかけると地中海の味わい!お好みでバルサミコを少し振りかけてもよいですね。冷蔵庫で冷やして食べてもおいしいですよ。
d. 醤油&すし酢&豆板醤&小口切りネギ
辛いもの好きの方におすすめなのが、醤油とすし酢を同量づつまぜ、豆板醤を少し加えたピリ辛風味。彩りに小口切りネギをパラパラと振りかけます。
★丸ごとナスのフライ、丸ごとナスの素揚げ
フライや素揚げの場合も丸のまま調理します。
フライの場合、ヘタを残してガクは取り除いたあと皮を薄くむき、数分水にさらしてアク抜きしたらキッチンペーパーで拭き取ります。
ナスは衣がつきにくいため、まず小麦粉を薄くまぶしてから、小麦粉・水・溶き卵を合わせたバッター液につけて、その後パン粉をつけます。パン粉は目の細かいものを使いましょう。160度の油で5-6分揚げます。
フライの衣がぴっちりとナスを覆って、ナスの水分が保たれたまま熱が通るため、トロトロの食感が楽しめます。
食べる時には、とんかつソースだけでなく、トマトソースや、マヨネーズとケチャップ同量を合わせて隠し味にウスターソースを加えたオーロラソースをかけましょう。
素揚げの場合も、洗って水気を取ったあと、ガクは取り除きヘタと皮はつけたまま。揚げている途中に爆発するのを避けるためナスに対して縦方向に浅く包丁を4,5カ所入れて、160度の油で5-6分程度揚げます。
ダシとおろししょうがをかける揚げびたしがおなじみの食べ方ですが、オリーブオイルとバルサミコとお醤油をかけて洋風にしても美味しいです。
★丸ごとナスの煮物
煮物にする時もヘタと皮をつけたまま、ガクだけを取り除いて丸のままで調理します。
味が染み込みやすくなるよう、ナスに対して縦方向に5ミリ幅で数か所切れ目を入れます。(ナスを切り離してしまわないよう注意です)
ダシ汁に醤油、みりん、砂糖を加えて調味して、落し蓋をして30分ほど煮ればできあがり。
暖かいままでも、冷蔵庫で冷やしても美味しく食べられます。食べる直前におろしショウガを添えましょう。
なお、ナスを購入する際は、以下の点に気を付けると新鮮で美味しいものが選べますよ!
・表面にハリがあって、つややかなもの。色が均一なもの。
・持った時に、ずっしりと重みを感じるもの。
・へたの切り口がみずみずしいものは新鮮。また、へたが枯れているものは古いので避けます。
・ガクの部分にある棘がしっかりとして、触ると痛いものは新鮮。
◇ナス料理にピッタリのノンアルコール飲料の選び方
イタリア料理でもおなじみのナスは、ワインとの相性抜群。
トマトソースやミートソースで調理したボリュームいっぱいのナス料理ならノンアルコール赤ワインを。
オリーブオイルで炒めたり、ビネガーでマリネした焼きナスなら、さっぱりしたノンアルコール白ワインがピッタリです。
また、揚げ物はビールと相性が抜群なので、揚げびたしやフライのような油で揚げたナス料理なら、ノンアルコールビールを合わせてみましょう。
相性のよいノンアルコールドリンクは、それぞれのお料理のおいしさをさらに引き出してくれますよ!