ボージョレだけじゃない! ワインの新酒を楽しもう ワインエキスパート本間朋子の【ワインはじめてアドバイス】
11月3日に解禁された山梨産ワイン 写真協力:富士の国やまなし館
ワイン初心者には、飲みやすい新酒がおすすめ
今年も新酒を味わえる時期がやってきました。
10月31日に、「フランス産ワインの新酒ボージョレ・ヌーボーが航空便で羽田空港に到着」というニュースを見たという人も多いかもしれません。
このボージョレ・ヌーボー、日本では「新酒」の代名詞的な存在だと思いますが、今回はボージョレ・ヌーボーだけではない、新酒についてご紹介します。
まず、フランスでは新酒を、「Vin de Primeur(ヴァン・ド・プリムール)」とか「Vin Nouveau(ヴァン・ヌーヴォー)」と呼びます。プリムールやヌーボーは「新しい」という意味で、野菜や果物が旬の前に「走り」と呼ばれるものがあるのと同じように、ヴァン・ド・プリムールは「走りのワイン」と言えます。
フランスでは、1967年に新酒の規定が確立されました。ワイン造りの歴史の長さから考えると、わりと新しい規定ですね。この規定により、フランス各地では11月第3木曜日がワインの新酒の販売解禁日と定められています。ことしの解禁は、11月19日の午前0時ですね。また新酒を販売する際は、ラベルに収穫年を表示しなければなりません。
フランス各地で、と書きましたが、フランスの新酒はボージョレ・ヌーボーだけではありません。「ボージョレ」というのは、フランスの内陸部ブルゴーニュ地方最南端の地区の名前で、この地区で生産される新酒が「ボージョレ(地方の)ヌーボー(新酒)」と名乗れるわけです。
このように、フランスには新酒と名乗って販売することのできる地域が「ブルゴーニュ・ヌーボー」「マコン・ヌーボー」など14もあります。それぞれの地区で、赤・白・ロゼのうち、どのワインを新酒として造っていいかが決められています。
日本は、ボージョレ・ヌーボーの最大の輸出国なので、新酒というとつい赤ワインを思い浮かべてしまいますが(ボージョレ地区では白ワインの新酒は造れない規定になっています)、白ワインの新酒ももちろんあるのです。
ヌーボーワインは、ブドウの収穫から6週間程度で醸造・出荷することになるため、じっくりと時間をかけて熟成させる通常のワインと異なった造り方をします。例えば、赤ワインでは、炭酸ガスを満たしたステンレスタンク内にブドウを房ごと入れて数日間おき、その後、果汁のみを発酵させる「マセラシオン・カルボニック」という醸造方法をよく使います。この方法だと、色がよく出ているわりに渋みの少ない、フレッシュでライトな味わいのワインができるのです。
ですから、赤ワインは渋みが苦手――という人も、新酒であれば比較的飲みやすいので、ぜひ試してみてください。冷蔵庫で少し冷やし気味にして飲むのがおすすめです。
今年のブルゴーニュのぶどうー
また、フランス以外にも「新酒」の規定をもった国があります。
近年少しずつ耳にすることも多くなった「Vino Novello(ヴィーノ・ノヴェッロ)」は、イタリア産ワインの新酒です。解禁日は「10月30日0時1分」。イタリアは新酒について単独の法律があり、醸造期間は10日以内、アルコール度数は11%以上、12月31日までに瓶詰すること――などと細かく定められています。
また、ドイツの新酒は「Der Neue(デァ・ノイエ)」で、解禁日は11月1日です。
ちなみに、日本にはワインに関する法律がなく、新酒の規定や解禁日などは特に設けられていません。全国のワイナリーで新酒を楽しむイベントや地域のお祭りがこの時期、開催されています。ワイナリーの見学ができるところもありますので、興味のある方はぜひチェックしてみてください。
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本間朋子 Profile
旅と食のライター/日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート・調理師
新聞社勤務を経て、2009年に独立。おもに「食」「旅」に関する記事を雑誌や新聞、Web媒体などに執筆するほか、「食」をキーワードとした地域活性化を目的にイベントなどを企画する。「食生活ジャーナリストの会」会員、有限会社Let It Be 代表取締役。
※ワインエキスパートとは
ソムリエと同等程度の知識を持っているワイン愛好家の呼称認定資格で、日本ソムリエ協会が認定する。資格には職業により下記の3種類がある。
・ソムリエ……飲食店でのアルコールを含むサービス業従事者
・ワインアドバイザー……酒類製造、流通業従事者または教育機関の講師
・ワインエキスパート……上記以外のワイン愛好家