安物ワインと思っていない?実はすごいスクリューキャップ
レストランで高級ワインを開けると、うやうやしくワインを手にしたソムリエが、ソムリエナイフでキャップシールをとコルクを抜いて、グラスに注ぎ分けてくれますよね。
ソムリエの華麗な手さばきの抜栓はとても格好いいだけではなく、これから美味しいワインを飲むために気持ちを高める儀式のようにも感じてしまいます。
ところが最近増えているのが、カチッとひねるだけで開栓できてしまうスクリューキャップ。
ソムリエナイフもワインオープナーも不要なので、家庭などで飲むときにはとても重宝しますが、反面、「スクリューキャップのワインなんて、どうせスーパーで売っているマズい安ワインでしょ」と思っている方はいませんか?
実はそれは大間違い。スクリューキャップは、ワインの不良品を減らし、フレッシュな品質を長くキープして美味しさを守ってくれる素晴らしいテクノロジーで、最近は高級ワインにも使用されているのです。
今回は、スクリューキャップの歴史、そして、スクリューキャップのワインに与える効果を分かりやすく説明します。
◇そもそも、コルクって何?
さて、スクリューキャップを語る前に、知っておきたいのがコルク栓。
ワインには現在ではさまざまなタイプの栓が使われていますが、そもそも最初にワインボトルの栓として使用されるようになったのが、コルク樫の樹皮から作られる天然コルク栓です。
天然コルクは、もとはコルク樫と呼ばれる木の皮です。コルク樫は地中海沿岸原産の植物で、現在でも南ヨーロッパや北アフリカで広く栽培されています。
コルク樫の分厚い樹皮は、6角柱の形をした細胞がレンガのように積み重なってできた構造になっており、細胞内は空気で満たされています。
そのため、高い弾力性をもつほか、高い断熱性・防音性、疎水性(水を通さない性質)に優れています。
この弾力性を利用して、コルクはワインボトルの栓を始め、楽器、スポーツ用具などに使用されたり、断熱材や床材・壁材などの建材に使われています。
◇コルクはいつから使われているの?
コルクがボトルの栓として使用されるようになったのは、おそらく紀元前4000年から2000年ごろの地中海沿岸といわれています。
そのころの地中海沿岸地域では、ワインやオリーブオイル、穀物などの輸送・保存にアンフォラという素焼きのカメが使われていました。その栓として、布、ミツロウ、松脂とならんでコルクも使用されていたようです。
しかし、栓としてのコルクが爆発的に普及するようになるのは、もっと後の17世紀ごろ。16世紀にヨーロッパでガラス瓶の製造が量産化されたことに伴い、それまで木樽に詰められていたワインは、ガラスボトルに小分けされるようになりました。
その時に、弾力性と疎水性に富み、内部の液体の漏れを防ぐコルクが、ワインボトルの栓として使われるようになったのです。
コルクは、栓としての性能はもちろん、弾力があるため加工時の多少のサイズのずれも問題なく、さらに、瓶の口に押し込むだけで膨らんでしっかりと密閉してくれるので瓶詰作業の労力も少なくて済む利点もあるため、現在まで長く使われ続けています。
ガラス瓶とコルクの登場以前は、ワインを木樽で保管したり、容器に小分けしてその上に油を張って保管していました。この時代は、ワインはどうしても酸素にさらされてしまうため、酸化による味わいの劣化はつきものでした。
しかし、酸素をしっかりと遮断するガラス瓶と、高い弾力性と疎水性で瓶をしっかり密閉してくれるコルク栓を使って小分けすることで、ワインの品質を長く保ったり、長期熟成を行うことも可能になりました。また、スパークリングワインの誕生も、ガラス瓶とコルクの登場によってもたらされたのです。
◇コルクで起きる問題とは?
このようにワインの品質向上に大きな役割を果たしたコルクですが、一つ大きな問題がありました。それが、ブショネ。
ワインを開けると、ごくまれにですが、湿った段ボールや雑巾のような臭いがする場合があります。これがブショネという現象です。
ブショネの原因はコルクにあります。コルクは、コルク樫の分厚く育った樹皮をはぎ取って自然乾燥させた後、煮沸して平たくのしてから、丸く打ち抜いてコルク栓に加工して作られます。
この工程で、塩素での漂白・消毒が行われますが、その時にコルク内部の組織に潜んでいた細菌と塩素の成分が反応してTCA(トリクロロアニゾール)という成分を作り出し、それが不快な臭いの原因となるのです。
天然コルクは木の皮を素材としている関係上、ブショネは一定の割合で発生してしまいます。一説によると、天然コルクでのブショネの発生率は1%から5%にも上るといわれています。
ワインメーカーが丹精込めて作ったワインも、ブショネコルクに当たると不良品になってしまいます。そのため近年では、コルク栓の利点を残しつつブショネの発生の心配がないよう、さまざまな加工を施したコルクも発売されています。しかし、天然コルクと比べるとコストが大幅に高くなってしまうのがデメリットです。
◇スクリューキャップ、いつから始まった?
現在はコルクの樹皮を打ち抜いて作る「天然コルク」、そして、コルクを抜いた端材を細かく砕いて圧着した「圧縮コルク」などの一般的なコルク以外に、最近では、ブショネを防ぐためのさまざまなワイン栓が作られています。
例えば、シリコンなど弾力性のあるプラスチックを用いて作った「プラスチックコルク」、天然コルクを原料として特殊な処理をしてTCAを除いてブショネの心配をなくした「合成コルク」、あまり一般的ではありませんが、ガラスで作られた「ヴィノロック」などがあります。
そして、そのような新しいタイプの栓の一つとして、スクリューキャップがあげられます。
スクリューキャップとは、ガラスボトルの上部とフタにそれぞれネジ山が切ってあり、それらが組み合わさって閉まるタイプのフタをいいます。
現在では、ワインのスクリューキャップを始め、栄養ドリンクのビンのフタなどに使われているので、皆さんにもおなじみですね!
最初のスクリューキャップの誕生は約100年前。1926年のイギリスです。しかし、当初のスクリューキャップは密封性が低かったため、当時は大きく普及するには至りませんでした。
スクリューキャップが再度注目されるようになるのは、その後1960年代です。密封がしっかりできるスクリューキャップが開発されたことで、簡単に開けられて、保存性も高いということで爆発的に普及しました。
ワインにスクリューキャップが使用されるようになったのは、1970年代ごろから。最初は、オーストラリアやニュージーランドのワイン生産者から導入が始まりました。
その理由となったのは、コルクの産地は北半球の地中海沿岸に集中しており、南半球にあるオーストラリア・ニュージーランドまで輸送するにはコストがかさんだことが一つ。
そしてもう一つ、ブショネの少ない良質のコルクは、コルクメーカーの古くからの取引先であるヨーロッパのワイナリーに渡ってしまい、ワイン作りの新興国であるオーストラリア・ニュージーランドの生産者はブショネの少ない良質のコルクの入手に苦労したことがありました。
そこで、自国でも製造ができ、TCAを含まずブショネの心配もないスクリューキャップの使用が積極的に進められたのです。
スクリューキャップの使用が始まった当初は、密閉度への懸念から長期熟成の必要な高級ワインへのスクリューキャップの使用を不安視する声も多く、スクリューキャップは主に安いワインに使用されていました。
そこから、スクリューキャップのワインは安ワインというイメージが生じてしまったようです。
しかしその後、スクリューキャップの技術改良が進められ、また、研究の結果、スクリューキャップはコルクを超える密閉度を持ち、ワインの品質に悪影響を与えないこと、そして、スクリューキャップであっても、ワインに溶け込んだ酸素およびボトル内の酸素で、速度は遅いもののワインはきちんと熟成することもわかってきました。
そして2000年、コルクの生産量が不足する「コルクショック」をきっかけに、オーストラリアのリースリング名産地として知られるクレアヴァレーの生産者が集まり、一斉に白ワインのコルクをスクリューキャップに切り替えることを宣言し、大きな注目を集めます。
その後、ニュージーランドのソーヴィニョンブラン名産地で知られるマールボロがその動きに続き、そこから、オーストラリア・ニュージーランド全土でスクリューキャップの使用に切り替わる動きが芽生えます。
特にニュージーランドでは、スクリューキャップのメリットを消費者にPRするNZSWSという機関が結成され、スクリューキャップの使用推進に一役買いました。
そして、徐々にスクリューキャップはコルクに劣らないワイン栓としてプレミアムクラスの赤ワインにも使用されるようになります。
現在ではなんと、オーストラリアワインの90%、ニュージーランドワインにおいては全ワインの99%がスクリューキャップを使用するまでになりました。
全世界的にみると、現在のスクリューキャップの使用率は25%程度。フランスやイタリアなどの伝統的なワイン産地でも、徐々にスクリューキャップを導入する動きがみられています。
◇スクリューキャップのメリットと効果
スクリューキャップを使用する一番の利点は、やはりブショネの心配がない事ですが、他にもスクリューキャップにはさまざまなメリットがあります。
スクリューキャップを使うことによるメリットを整理してみしょう!
・ブショネの心配がなく、品質が安定する
ブショネの原因物質・TCAは、コルク内の細菌による汚染が原因で発生します。天然のコルクを使用しないスクリューキャップは、TCAが発生しないためブショネの心配がありません。
また、天然のコルクは木の皮を打ち抜いて利用するため、どうしても個々のコルクによって品質のばらつきがあります。そのため、同じロットのワインをボトリングしても、コルクの品質によってボトルごとのワインの保管状態
・熟成状態に違いが生じることがあります。
それに対して、製品のばらつきの少ないスクリューキャップの場合は、安定したワインの味わいを楽しむことができます。
・酸素遮断性が高く、ワインのフレッシュな味わいを保つ
スクリューキャップはコルクに比べて気密性が高く、酸素を通す量はごくごくわずか。
天然コルクの酸素透過性が0.001~0.0023cc/日なのに対し、スクリューキャップの酸素透過性は0.0002~0.0008cc/日と、数値で見ると大きな差があることがわかりますね!
ですので、酸素の影響による品質劣化が少ないのがスクリューキャップの特徴。特に、酸素の影響で損なわれやすいフレッシュな果実味が主役となる白ワインの味わいを、新鮮なままキープしてくれます。
・保管の際に寝かせなくてもOK
素材自体に伸縮性があるため、瓶の口に打ち込むだけでピッタリと密閉して酸素を遮断してくれるコルク栓。
しかし、コルク栓が乾いて収縮してしまうと、液漏れを起こしてしまったり、瓶口との隙間から酸素がボトル内に侵入してワインを劣化させてしまいます。そのため、コルク栓のワインは寝かせて保管し、常にコルクがワインで湿っている状態にする必要があります。
その点、スクリューキャップに使用されている素材は乾燥による影響を受けないため、寝かせて保管する必要がありません。
ワインセラーのように寝かせて保管するスペースがない場合でも、立てて置いておけるので省スペースですね!
・開栓が簡単
ワインが飲みたいのに、ワインオープナーがなくて栓が開けられなかった経験はありませんか?
キャップをカチっとひねるだけで開栓できるスクリューキャップのワインなら、その点安心。ホームパーティーやアウトドアなどに持って行くのに最適です。
また、天然コルクの耐用年数はおよそ30年程度といわれており、長期保存したワインはコルクがボロボロで開けられないことがあります。
スクリューキャップであればそのような劣化は心配ありません。
飲み残しが出た場合は、閉めるだけで再栓ができるのも、スクリューキャップの便利な点です。ただし、いったん開栓したワインは酸素にさらされて酸化が始めるため、早めに飲み切りましょう。
なお、スクリューキャップを使用したワインが熟成するかについては、諸説さまざま。
十分な熟成のためにはコルクから透過する微量の酸素が不可欠という説や、ワインの熟成にはボトル内の酸素だけで十分なのでスクリューキャップであってもマイルドに熟成していくという説があり、議論の分かれるところです。
そもそも、スクリューキャップは歴史が浅く、本格的にワイン栓として普及するようになったのは2000年代以降。
そのため、スクリューキャップの高級ワインが実際どのように熟成していくのかを確認するには、まだまだこれから待つ必要がありますね。
◇格好いいスクリューキャップの開け方は?
さて、スクリューキャップを開ける時、ほとんどの皆さんは栄養ドリンクの瓶を開ける時のように、キャップ上部のねじになっている部分をひねって開けていると思います。
しかし、実はこれはNG。ワインに使われているロングタイプと呼ばれるスクリューキャップの場合、この開け方ではキャップがくるくる回って開かなくなってしまうことがあります。また、キャップのミシン目の部分で指を引っかけて傷つけてしまう恐れもあります。
そこで、ワインのプロであるソムリエが実際にやっている、正しく、かつ、格好いいスクリューキャップの開け方を身につけましょう。
【ソムリエもやっている、格好いいスクリューキャップの開け方】
1. ボトルを持ちあげ、ボトルの底をしっかり握る。反対の手でスクリューキャップのミシン目の下の、ボトルの首の金属部分をしっかり握る。
2. キャップの下を握った手は固定したまま、ボトル部分を右回り、カチッと音がするまで回す。
3. カチッと音がしたら、キャップのミシン目が切れた合図。ここで初めてキャップの上部を左回りに回して、キャップを外します。
次回スクリューキャップを開ける時には、ぜひこのやり方でスマートに開栓してみてくださいね!
◇ノンアルコールワインも、スクリューキャップでフレッシュな味わい!
MELLOW STOREで取り扱い中の、ネオブュル社のノンアルコール・スティルワインシリーズ、そして200mlのノンアルコール・ミニボトルシリーズも、スクリューキャップです。
ネオブュル社のノンアルコール・ワインシリーズは、いったん醸造したワインを真空蒸留という特殊な方法で32℃という低温で蒸留し、ワインがもつ豊かなアロマを守りつつアルコールを除いています。
スクリューキャップなら、瓶詰めしたてのフレッシュな香りと味わいをしっかりと保持。まるで本物のワインを思わせる味わいを、そのまま皆さんの食卓へお届けすることが可能です。
「ノンアルコールはマズい」というイメージをくつがえす、ネオブュル社のノンアルコール・ワインシリーズ。リアルな味わいを楽しんでください!
ベリー系の香りにほんのりしたロースト香と、ほのかなタンニンが感じられる、秋にピッタリの赤ワインです。
柑橘と青リンゴのさわやかな果実香に、ほんのりと上品な樽のニュアンスす。しっかりとした酸が効いていて、クセのない味わいがどなたにも飲みやすいノンアルコール白ワインです。