ワインにおけるイギリスの重要な役割について
幸せを比喩する表現として、以下のような言葉を聞いたことがありませんか?
幸せは、アメリカの給料を貰い、中国人のコックを雇い、イギリスの家に住み、日本人の妻を持つこと。不幸せは、中国の給料を貰い、イギリス人のコックを雇い、日本の家に住み、アメリカ人の妻を持つこと。
イギリスはグルメとはかけ離れているイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?
そして、グルメが好む飲み物であるワインとイギリスを結び付けてイメージすることができない方も多いかもしれません。
しかし、イギリスは、ワインという飲み物を「醸造」ではなく、外側からバックアップする形で、世界的に発展させた重要な国なのです。
そこで、今回は、ワインにおけるイギリスの重要な役割について、解説していきたいと思います。
フランスの本場ボルドーワインの市場を大きくしたイギリス
ワインと言えば、フランス。フランスのワインと言えば、ボルドーやブルゴーニュですよね。
フランスでは1152年、エレオノール女公が後のイギリス王ヘンリー2世と結婚しました。ここで、フランスとイギリスの国際的な結びつきが強くなります。二人の結婚を機に、ボルドーを含むフランス西半分の葡萄産地がイギリスがフランスワインの最大の市場になり、ワインの醸造が栄えていきます。
スペインのワインを発展させてきたイギリス
1338年にイギリスはフランスとの間で百年戦争が始まります。当然、イギリスはフランスからのワインの輸入が困難になります。そして、フランスの代わりになるワインの地として、イギリスはキリスト教徒がアラブ人から奪還していたアンダルシア地方のヘレスのワインに注目するようになります。
16世紀以降になると、ワイン貿易に関わる各国の商人たちが、スペインワイン、特にイベリア半島南部で生産されるワインに注目するようになり、イギリス商人が特権商人として当局の保護の下に積極的にスペイン南部に移住するなど、イギリスとのワイン取引が増えていきました。 それ以来、イギリスは今日までスペインワインの重要な取引先となっています。
1800年代にはイギリス国内でスペインのワインが人気を博したのがきっかけで、広く世界へスペインのワインが広がったと言われています。
ポルトガルのワインを発展させたイギリス
1659年に、フランスがスペインと和平関係を結ぶと(ピレネー条約)、フランスと対立するイギリスはスペインを抑えるためにポルトガルに目をつけました。
そして、ポルトガルとイギリスの関係は密になっていきます。イギリスはフランスと対立する度に、フランスからのワインを調達できなくなります。スペインとも対立しているため、ポルトガルへ打開策を求めるのは妥当かもしれません。
ポルトガルのワインは、イギリス商人の努力もあり、質を高め、イギリス市場に流れていきます。ポルトガルからイギリスへのワイン輸出が当たり前になってくると、海上輸送によるワインの劣化を防ぎ風味をよくするためにワインにブランデーを加える事が習慣になりました。これがポートワインの原型です。 ポートワインはイギリス人の好みに合い大ヒット商品となりました。
ポートワイン…ポルトガル北部ポルト港から出荷される特産の酒精強化甘口ワインです。「ポルトガルの石」と呼ばれるルビーポルトが有名で、中でもフォンセカルビーポルトが代表格。ブドウの甘味と強いアルコールを感じられる一品です。
オーストラリアのワインを発展させたイギリス
オーストラリアの歴史は、フィリップ大佐に率いられイギリス人入植者たちがシドニー港に到着した1788年に始まります。ぶどう栽培とワイン造りが始まったのは1800年代と言われ、イギリスの介入を機に、その後、ヨーロッパの品種が大量に持ち込まれ、ワイン造りが盛んになりました。
イタリアのワインを発展させたイギリス
18世紀後半、イギリス人のジョーン・ウッドハウスは、シチリア島で白ワインの一部を蒸留して得たアルコールを白ワインに加えた酒精強化ワインのマルサーラを造ってイギリスへ輸出します。イタリアワインも国際化のきっかけの1つとなりました。
あのシャンパンを生んだのもイギリスだった
シャンパンと言えば、MELLOWでも何度もお伝えしていますが、瓶内二次発酵製法が特徴ですよね。実は、シャンパーニュ地歩のワインは、イギリスに輸出する際に、樽からガラス瓶に移し替えるようになったんです。
瓶に入ったシャンパーニュのワインは、泡を偶然に含みます。泡の入った白ワインは、華やかでイギリスの貴族階級の間で広く飲まれるようになったのです。瓶内で偶然に発砲したことから、シャンパーニュが
瓶内二次発酵…別名シャンパーニュ方式と呼ばれるこの工程は、約2ヶ月間かけて、ゆっくりとワインを二次発酵させます。瓶内の酵母が糖を分解し、アルコールと炭酸ガスが発生、この緩やかな発酵の間に、ワイン独自の香りがより複雑になり、普通のワインから独自の泡を持つシャンパンへと変化していきます。
今は、スパークリングワインの隠れた名産地となったイギリス
イギリスは長きにわたって、ワインの生産地としてはインパクトを残すことはなかったのですが、最近は、スパークリング・ワインがとても脚光を浴びています。シャンパーニュ地域を地質学上は土壌が酷似していて、シャンパーニュに負けない高品質なスパークリング・ワインの生産を可能にしていたのです。
イギリスのワイン生産は、地球温暖化によって、後押しされました。
最後に:イギリスにはワインの教育機関がある
イギリスのロンドンには、WSET(ダブリューセット)の本部があります。
WSET(ダブリューセット)は、世界最大のワイン教育機関です。ワイン産業をサポートする英国のワイン商組合『Vintners Company』により1969年に創設され、現在では世界70ヶ国でWSETの教育組織が運営され、年間約72,000人が認定試験を受験するなど、国際的に認められている認定資格です。
ワインを歴史的に統括してきたという意味で、イギリスのロンドンが本部というのも頷けますよね。
今回は、イギリスが持つワインの役割について、分かりやすくまとめてみました。ぜひ、今回の記事も参考にしてみて下さい。