ワイン用ブドウの秘密
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カレンダーはあっという間にもう9月。秋の到来ですね。
さて、秋を代表する果物といえば、やはりブドウです。ワインの原料でもあります。
ところで、私たちがスーパーなどで目にするブドウと、ワインの原料のブドウ。同じブドウと言っても、その種類は全く異なるということはご存じでしょうか?
今日は、ワイン用ブドウの味わいの秘密について調べてみました!
◇大きくて甘~い、生食用ブドウ
果物としてのブドウは、植物学上でいうとブドウ科 (Vitaceae) ブドウ属 (Vitis)に属する、つる性落葉低木の果実のことを言います。
ワインの原料として、あるいはレーズンや生食用として、人類の歴史と共に歩んできたブドウ。ブドウはとても突然変異を起こしやすい植物として知られており、一説によると、全世界にはなんと10,000を超えるブドウ品種があると言われています。
私たちがイメージするブドウというと、まずはブドウの王様・巨峰、昔ながらの小粒のデラウエア、最近では高級ブドウとして大人気のシャインマスカットなどが頭に浮かびますね。
実はこれらのブドウは、食用に適するよう、大きな粒と薄い果皮をもち食べられる部分が多くなるよう品種改良された生食用のブドウです。
また、日本で食べられているブドウは、主にアメリカ系の品種や、アメリカ系品種にヨーロッパ系品種を掛け合わせて改良された品種という特徴があります。
とういのも、ブドウの開花~成熟期にあたる時期に梅雨や秋雨がある日本の気候の下では、乾燥した気候に適したヨーロッパ系の品種は栽培が難しく、定着しなかったのです。
それに対して、アメリカ系ブドウの原産地であるアメリカ東海岸の気候は日本と似ており、また、アメリカ系ブドウは高温多湿な気候の下で発生しやすい病気や害虫への耐性が高いため、日本の気候風土に適合し栽培が普及しました。
しかし、酸と甘みのバランスや、果実の食べやすさ、日持ちという点で軍配があがるのはヨーロッパ系品種。
そこで、日本では、アメリカ系品種にヨーロッパ系品種を掛け合わせて、独自の様々なブドウ品種が作られており、日本で生産されるブドウのおよそ7~9割は生食用ブドウと言われています。
◇分厚い皮、大きな種のワイン用ブドウ
生食用のブドウと比べると、ワイン用のブドウの特徴は、まず粒が小さいこと。
ワインの色の元になるアントシアニン、渋みの元となるタンニン、あるいは、ワインの芳香の元になるフェノールやテルペンといった成分は、主にブドウの果皮に含まれていますが、小粒の果実の方がブドウ全体の量に占める皮の割合が大きくなるため、凝縮したフレーバーの美味しいワインを生み出すには、粒が小さい方が断然有利なのです。
また、渋みの元・タンニンは果皮だけではなく種にも多く含まれます。
ワインの美味しさの一部でもあり、長期熟成を可能にする成分でもあるタンニンを豊富に含む種が大きいのも、ワイン用ブドウの特徴です。
そして、果汁が発酵してアルコールを生み出すもとになるのが、ブドウに含まれる糖分。そのため、ワイン用のブドウは、生食用のブドウ以上に高い糖度が必要になります。
生食用のブドウの平気的な糖度が18~20度程度なのに対し、ワイン用のブドウの糖度は20~25度程度と、ずっと高くなります。
また、美味しいワインは、甘み、酸、渋み、フレーバーのバランスが取れていることがとても大事。
ですので、ワイン用ブドウは生食用と比べるとより多くの酸を含んで酸っぱいのが特徴です。
しかし、実際は生食用ブドウとワイン用ブドウを食べ比べると、生食用ブドウの方をより甘く感じます。これは、強い酸味によって、甘みの強さがマスクされて感じにくくなる作用によるものです。
ちなみに、カベルネソーヴィニョンやシャルドネなど、ワイン用の国際的なブドウはほぼヨーロッパ系品種。
乾燥した気候を好み、水分が多すぎると果実が破裂してしまったり、カビによる病気に弱いヨーロッパ系ブドウは、梅雨や秋の長雨のある日本では栽培が難しいため、日本ではワイン用にも、ナイアガラやコンコード、デラウェアなどのアメリカ系品種や、マスカットベリーAやブラッククイーンなどアメリカ系品種とヨーロッパ系品種の交配品種が使われることが多く、ヨーロッパ系品種の栽培量はごくわずかです。なお、有名な甲州は日本独自の固有種になります。
◇お酒が飲めない方にもおすすめ。ワイン用ブドウのグレープジュース
粒が小さく、皮も種も多く食べにくいけれど、凝縮した甘みと酸味があり、凝縮した味わいをもつのがワイン用ブドウと言えます。
最近では、ワイン用ブドウから作られた100%ジュースも販売されており、一般的なグレープジュースにはない、ワインを思わせる濃厚な味わいがとても美味です。
お酒が飲めないけれどワイン気分を楽しみたい時などには、ノンアルコールワインはもちろんですが、時には趣向を変えて、濃厚リッチなワイン用ブドウ100%ジュースを試してみるのもよさそうですね!