寝る前のナイトキャップ、本当に効果的?お酒と睡眠の正直な関係
本文を蒸し暑くて寝苦しい季節に入ってきましたね。
こんな季節、寝る前のナイトキャップなど、眠れない時にお酒の力を借りる方は多いと思います。
また、皆さんも一度くらいは、酔っ払って帰宅して記憶がないまま寝てしまった経験があるのではないでしょうか?
そんなことから、お酒にはは睡眠を誘発するというイメージがあります。
ところが、実はお酒は深い睡眠の妨げになっているってご存知でしたか?
今日はアルコールと睡眠の関係について見てみましょう。
◇眠気を誘発する物質・アデノシン
睡眠に深く関わる物質がアデノシン。
アデノシンはヒトの体が活動するときのエネルギー源であるATP(アデノシン三リン酸)が代謝してできる物質で、起きて活動する時間が長くなるほど、体内に蓄積していきます。そして、アデノシンの蓄積が多くなると、ヒトは眠気を感じます。
アルコールには、このアデノシンの分泌量を急激に増やす作用があります。
お酒を飲むと急に眠気を感じてしまうのはこのためです。
◇ヒトの睡眠リズム ~レム睡眠とノンレム睡眠~
しかし、お酒によるアデノシンの急激な分泌で引き起こされる睡眠では、ヒトの自然の睡眠が持つリズムが乱されてしまいます。
自然な状態では、ヒトの睡眠には、レム睡眠と呼ばれる浅い睡眠状態と、ノンレム睡眠と呼ばれる深い睡眠状態が交互に訪れるリズムを持っています。
レム(REM)睡眠のREMは、Rapid Eye Movememt(急速な眼球運動)の省略形。
筋肉が弛緩して体は眠っていますが、脳は覚醒に近い状態の睡眠で、この時にキョロキョロと眼球の動きが生じることからこの名前が付けられました。
ヒトはこのレム睡眠の時間帯に、その日一日に起きた記憶や感情の整理を行っていると言われています。学んだことが長期記憶へ変換されたり、技能として定着するのもこの時間です。
それに対し、ノンレム睡眠は体も脳もグッスリと眠って休息している状態です。
通常のヒトの睡眠リズムでは、眠りに落ちてまずノンレム睡眠が現れ、次にレム睡眠が出現するサイクルを、およそ90分の単位で繰り返しています。
健康な睡眠では、一晩にこのサイクルが4,5回行われて、約6-8時間ほどの睡眠時間となります。
◇健康な睡眠リズムを乱すアルコール
しかし、アルコールを摂取して眠りについた場合、この自然な睡眠リズムが乱されます。
アルコール摂取後は、まず通常のレム睡眠より深い状態のレム睡眠が現れます。
しかし、睡眠の恒常性を保とうとする体の作用が働き、その後のサイクルで出現するレム睡眠は逆に通常のレム睡眠よりずっと浅い睡眠となってしまいます。
そのため、睡眠が浅く心身の疲れが十分に取れなかったり、また、十分に休息が取れていないにもかかわらず、目が覚めてしまう事が増えるのです。
また、アルコールには利尿作用があることも知られています。
アルコールを分解し排出するために、体内では沢山の水を使った化学反応が行われます。そのため、お酒を飲んだあとは喉が渇いたり、おしっこに行きたくなって、睡眠の途中で目が醒めてしまう事が増えるのです。
◇睡眠を損なわないお酒の飲み方は?
上記のような理由で、体内にアルコールや、アセトアルデヒド(アルコールが分解・排出される途中で発生する物質で、体の覚醒度を高めます)が残っている状態で眠りにつくことは、睡眠の質を大きく下げてしまうため良くありません。
ちなみに、ビール中瓶1本が完全に分解されるために必要な時間は男性(体重68キロを想定)で約4時間、女性(体重52キロを想定)で約5時間程度。
アルコールを飲む際は、就寝前の4,5時間以内はなるべく避けるのが望ましいです。
お酒を飲まなければ眠れない・・・という方は、睡眠専門外来などを受診して、お酒以外の方法で眠れるよう医師の治療やアドバイスを受けるのが良いでしょう。
また、アルコールは耐性が付きやすく、習慣的にアルコールを摂取していると、酔いを感じるために必要な量が増加していきます。
「最近酔わなくなった」とどんどん量を増やしてしまうと、睡眠の質をますます下げることになるので気を付けましょう。