ドクターに聞いた!休肝日のノンアルコールワイン活用法
「あなたの健康のために、週1~2日はお酒を飲まない“休肝日”をつくりましょう」
テレビなどで言われていることですが、あなたはやっていますか?
毎日晩酌するのが習慣になっているし、それほどたくさん飲むわけではないから休肝日なんて必要ないんじゃない? 飲まずに我慢するストレスの方が、体に悪いよ。
そんな声も聞こえてきますが、医学的に見てどうなのでしょうか。
東京都文京区のこまごめ緑陰診療所で患者さんと向き合っている、精神科医の福田博文先生にお話を伺いました。
肝臓はこんなにがんばっている
4ドリンクのお酒で分解に10時間
――休肝日は、ほんとうに必要なのですか?
福田Dr アルコールは肝臓で分解されるのですが、4ドリンクのお酒(ビールなら中瓶2本、日本酒なら2合、焼酎なら1.2合※)を飲むと、分解には平均10時間かかると言われています。飲んでいる時間は少しでも、その後、寝ている間にも肝臓は働き続けているのですね。それだけではなく、お酒を飲むと肝臓に中性脂肪が蓄積されますし、胃や腸などの消化管の粘膜も刺激で荒れます。
このような臓器の疲れや損傷を修復するために、週に2日はお酒を飲まず「肝臓を休ませてあげる」という意味で“休肝日”を設ける必要があるのです。
――アルコールの分解にそんなに時間がかかるとは、初めて知りました。
福田Dr 4ドリンクのお酒で10時間ですから、もっとたくさん飲めばよけいに時間がかかります。しかも就寝中だと分解時間は長くなりますから、前の晩に飲んだ翌朝は、実はまだアルコールが残っていると思って間違いないわけですね。
――休肝日は、仕事のように5日飲んで2日連続でお休み、というような取り方でもいいのですか?
福田Dr そうではなく、2~3日飲んだら1日休むという方が効果が高いので、そのような習慣をつけてください。
休肝日もおいしく楽しく
休肝日にノンアルコールワイン
――とはいっても毎日食事はするわけで、お料理に合った飲み物がほしくなるのですが、そこでノンアルコールワインを飲むというのはどうでしょう。
福田Dr そうですね。他の人がお酒を飲んでいるところで「きょうは休肝日ですから」とお茶では興ざめという方も居られるかもしれませんので、そういう場合はノンアルコールワインというのはいいと思います。
私もデュク・ドゥ・モンターニュを飲んでみましたが、実際、味や香りも言われなければワインかと思ってしまうぐらいで、とてもおいしいと思います。私はあまりアルコールに強くないので、むしろ頭が痛くならずに食事中においしく飲めるなら、これはいいなと思いました。(笑)
――それなら、休肝日もストレスなく過ごせますね。
福田Dr その「休肝日をストレスと感じる」というところが、私にはひっかかります。
お酒を飲む理由には食事と合うからとか、みんなで飲む雰囲気がいいからとか、人によっていろいろだと思いますが、酔いを求めて飲む人も多いのです。アルコールが循環されて脳の神経細胞に作用すると、麻痺が起こります。すると酔った状態になり、いやなことが忘れられる、普段言えないことややれないことができてしまうというようなことが起こります。そのような体験を繰り返すと、いわゆる「気持ちがよくなる」状態になりたいがためにお酒を飲むようになってしまいます。そういう人が「休肝日はストレスだ」と感じるのは、アルコールの力で気持ちよくなる誘惑に囚われているのです。
これは、治療の必要な病気のアルコール依存症とは言えないまでも、アルコールに依存している状態であることには間違いありません。
「休肝日はストレスだ」は危ない!
――お酒だと気軽に考えてしまいますが、薬物などと共通するものがあるのですね。
福田Dr そうです。しかもお酒は薬物とは違って、合法的に安い金額で買えますし、どこにでも売っていて簡単に手に入るということで、かえって危険な面もあるのです。
――自分で休肝日をコントロールできる状態で過ごすことも、健康に必要なことなのですね。
福田Dr お酒を飲むのも飲まないのも、自分の意思で決定できる。飲酒から自由でいられることが重要です。
「休肝日だから、きょうはノンアルコールワインでおいしく食事を楽しもうか」と考えられる健康な人なら、心配ありません。
思いがけなく、アルコール依存症のコワさを知ることになってしまいました。しかし、おいしいけれど酔い心地にはならないノンアルコールワインを楽しめるということが、アルコールの誘惑から自由であることの証しでもあることがわかって、ホッとした気持ちにもなりました。
ノンアルコールワインを上手に使って休肝日を過ごしながら、食事と生活を楽しみたいですね。
※飲酒量の単位
アルコールの影響は飲んだお酒の量ではなく、そこに含まれる純アルコール量が基準になります。従来日本では日本酒1合=約20gのアルコールを1単位としてきましたが、近年は他国の基準に合わせて1ドリンク=10gを基準飲酒量としています。
―――――――――――――――――――――――――――――
福田博文先生 Profile
日本医科大学付属病院、関東逓信病院(現NTT東日本関東病院)の精神科に勤務。特に、アルコール依存症専門外来を十数年担当。その他、総合病院の精神科で様々な精神疾患の治療にも取り組む。NTTの専属産業医として産業保健の仕事にも従事。
2003年にこまごめ緑陰診療所を開設、現在に至る。