樽がワイン造りに与える影響について
樽とは簡単に言ってしまえば、ふたのある丸い(大形の)木製の容器です。
木は植物です。ワインの原材料であるブドウも植物です。無機物であるびんやプラスチックと違い、木の容器に飲み物を入れて置くと、お互いが生きてるがゆえに、相互作用するイメージが湧くのではないでしょうか?
そこで、今回は、ワインの醸造の中で、どのような樽がどのようにワインの味へ変化をもたらすのかを、解説していきたいと思います。
樽の大きさによって、ワインの味は影響を受ける
樽が大きくなればなるほど、樽の円周は大きく、内側の面積も広くなりますが、それ以上に、大量のワインが樽に入るようになり、ワインが樽と接する面積の割合は小さくなります。
そうなると、大きな樽ほど、ワインに樽の木の香りが付きにくくなります。小さな樽ほど、木の香りの影響が大きくなります。
ボルドーやブルゴーニューでは約225リットルの大きさの樽が使われています逆に、ドイツでは約4倍の1000リットルの大きな樽が使われます。
樽の材料によって、ワインの味は影響を受ける
例えば、フランスでは、トロンセ、アリエール、ヌヴェールなどの産地で知られる中央山脈のセシルオークが上品な樽の香りを作るとして、人気を博しています。
樽は生き物です。樽の生き物たる根源は木ですよね。人間だって、人によって香りが違いますよね(あまり心地よい喩えではないかもしれませんが)。
アメリカ産のホワイトオークは、ココナッツやミルクキャンディを感じさせる甘い香りをしています。
フランスのセシルオークはバニラの香りで醸し出します。
リムーザン地方のコモンオークは担任が強く、ワインよりもブランデーに使われることが多いと言われています。
先ほど述べた「樽の大きさ」と材質の香りの強さの組み合わせを考えて、樽を選ぶこともあります。
樽が古いか新しいかで、ワインの味は影響を受ける
神庭得てみれば、当たり前のことかもしれませんが、新樽の方が、新鮮で他から吸収を受けていない分、木の香りも強く付きます。
ただ、ワインそのものの力が弱い場合には、樽のクセが目立ってしまうワインが出来上がってしまいます。
新しい樽に1年寝かせたら、1年後には別の新しい樽に移してさらに1年寝かすような新樽200%というワインもありますが、逆に新しい樽を嫌う醸造家いるなど、ワインの個性を作るうえで、樽の年季を考えるのは非常に大事になってきます。
樽の内側の焦がし方で、ワインの味は影響を受ける
ワインの樽の内側は、製造工程上、樽を組んでいく時に、内側のオーク材を柔らかくする目的で、火で炙られます。なので、内側が焦げてしまうんですが、その焦がし具合によって、ワインの味が大きく変わります。
なので、ワインメーカーは、樽の製造工場に樽の焦がし具合の注文を付けるのです。
焦がし具合が弱めのライトトーストの樽は、ストレートですっきりとした木の香りをワインに添えますが、少し、木の辛みが加わります。
焦がし具合が中間のミディアムトーストの樽は、炙ったナッツの香りが漂います。ミディアムトーストの樽の香りは、香りが重厚な赤ワインでは感じにくく、白ワインだと感じることができます。ミディアムトーストの樽の焦がし具合が多少強めだと、コーヒーやココアやチョコレートなどの甘い香りが強くでてきます。
焦がし具合が強いヘビートーストでは、コーヒーなどの甘い香りがさらに強くなり、葉巻や燻製の香りを感じることができます。
樽の熟成期間で、ワインの味は影響を受ける
樽がワインの味にどれだけ影響を与えるのかは既に理解できていると思いますが、熟成期間が長ければ、影響を与える期間も長くなり、影響が大きくなるのは、想像できると思います。
樽熟成には、単に木の香りを付けるということだけではなく、木目を通しての緩やかな呼吸によって、ワインの酸化熟成させる効果があります。樽熟成が酸素の出入りが多く、酸化作用があるため味をまろやかになります。瓶などで熟成する場合は、酸素の出入りが少なく味をフルーティになります。
スペインの赤ワインのように、木の香りを付けることが目的ではなく、酸化熟成の効果だけを狙って、樽を利用しているケースもあるのです。
最後に
以上、樽がワイン造りに与える影響についてお伝えしてきました。樽だけでも、味を複雑にする様々な要素があり、複雑なことを考えなければならないのですから、ワイン造りとは、本当に奥深いということが理解できたかと思います。ぜひ、今回の記事も参考にしてみて下さい。